昨年(平成25年)の1月11日、第1類・2類のネット販売(及び郵便等販売)等の権利の確認を求める裁判において、最高裁が「第1類2類のネット販売(郵便等販売)を厚生労働省令で禁止していることは、薬事法の委任の範囲内とは認めることができない」という判決を下しました。
それにより、多くの薬局・薬店やそれらの機能をもつ大型店舗などが第1類及び2類のネット販売を解禁した事は何度かニュースにもなったため、記憶にある方も多いかと思います。
その反面、販売で被害が生じた際の法律的なバックアップが整備されていないグレーな状況で、どこまでの区分をネット販売可とするか、広告審査を担当する多くの方々が悩まれていたのではないでしょうか。

 そのような状況の中、「薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律」(平成25年12月13日公布、平成25年法律第103号)により医薬品の区分や販売方法が変更され、インターネットによる販売についても法的に明確な基準が設けられました。
今回のブログでは、平成26年6月12日より施行された一般用医薬品(OTC医薬品)の販売方法に基づき、個々の医薬品の広告における注意点を述べたいと思います。

 個々の商品のページの審査も大切ですが、まずは審査対象のサイト自体が医薬品のネット販売を行える基準を満たしているか確認することが必要です
一般用医薬品のネット販売をすることができるのは、薬事法に基づく薬局または店舗販売業の許可を受けており、実店舗を持っている薬局・薬店等のネット店舗に限られます。そのため、医薬品を販売しているサイトの場合は、通常の通販サイトにおける「特定商取引に基づく表示」に則った情報に加え、

・ネット販売のための許可証の内容(開設者名、所在地、所轄自治体等)
・相談用及び営業時間外の連絡先、実際の店舗の写真
・勤務中の薬剤師・登録販売者の氏名など
・厚生労働省のHPに記載されている店舗名・URL 等

少なくとも、これらの情報がサイト内にあることを確認する必要があります。

販売サイトそのものに問題がなければ、商品ページの確認にとりかかることができます。特に注意が必要な点を以下にまとめてみました。

■医療用医薬品・要指導医薬品は対面販売のみ(ネットや郵便等での販売は不可 )

 要指導医薬品は一般用医薬品に新たに追加された区分であり、今まで第1類医薬品として販売されていたものも含まれています。第1類から要指導医薬品に区分が変わった医薬品に対し、平成28年6月11日までは経過措置として「要指導医薬品」という表示は必須とされておらず、既存のパッケージのままの商品の販売や、パッケージに「要指導医薬品」とシールを貼っただけでも問題ないとされているため、医薬品区分の記載が新旧混在していることが想定されます。
パッケージ画像と区分の記載が一致しないというケースだけでなく、店舗の区分そのものが間違っているかもしれないという懸念もあります。
そのため、対象が「第1類医薬品」の場合は要指導医薬品が間違って含まれてしまっている可能性も鑑み、特に注意して審査を行う必要があります。

 また、劇薬以外の要指導医薬品は、発売から一定の期間(安全性評価期間)が経過し問題がないとみなされれば、第1類などの区分に変更されます。
時期は商品によってまちまちですので、区分の変更時期は特に気をつける必要があります(安全性評価期間は延長される場合有)。
具体的な製品名・安全性評価期間の終了時期などは、こちら『要指導医薬品一覧』(弊社作成)PDF(PDF:151.40 KB)をご確認ください。

薬局製造販売医薬品の場合は、製造した薬局による販売(直販)のみ可

 あまり広告では見かけないものですが、その名の通り薬局の設備を用いて製造しその薬局でのみ販売できる医薬品です。製造できる範囲は決められており、以前はネット販売の対象とはみなされていませんでした。
今回の法改正によりネット通販が可能となりましたが、製造した薬局以外では販売できない商材になります。そのため、これらが広告審査対象として挙がってきた場合は、通常の医薬品のネット販売の注意点(劇薬指定品目を除き、第1類医薬品と同等)に加え、「薬局製剤製造販売業及び薬局製剤製造業の許可を取得している薬局かどうか」「掲載サイトが製造した薬局のネット通販サイトか」を確認する必要があります。

ネット販売できる医薬品でも、薬局製造販売医薬品、第1類医薬品は、薬剤師のみ販売することが可能

 医薬品販売は薬事法上、対面販売(店舗等での販売)と特定販売(ネット販売及び郵便等販売)の2種類に分けられています。どちらも販売できるのは薬剤師か登録販売者資格をもつ者のみとなっているため、直接相手を確認できない特定販売の場合は、通販サイトなどに資格者についての情報(氏名・勤務時間帯等)を記載する必要があります。薬剤師と登録販売者はどちらも国家資格ですが、対応できる範囲が異なります。

 薬剤師→医療用医薬品・薬局製造販売医薬品・要指導医薬品・第1類~3類医薬品等、全ての医薬品を販売することが可能

 登録販売者→第2類医薬品・第3類医薬品のみ販売可能

そのため、薬剤師のみが販売できる区分の医薬品は、薬剤師が勤務している時間帯のみ取り扱いが可能です。

ネットオークションでの販売は不可

 改正された薬事法上の「競売による医薬品の販売等の禁止」に基づく判断です。医薬品に関しては、各オークションサイトなどでも既に取り扱い不可として基準に記載しているところがほとんどですが、この度、法律内にも取り扱い不可であることが記載されました。

■医薬品販売(薬局)サイトでの口コミの取り扱い方

 「店舗としての口コミは 可」であるものの、「医薬品の口コミ・感想・使用感は不可」。同じ薬事法で規制されている化粧品・薬用化粧品(医薬部外品)等は、「使用感は可」となっているため、場合によっては混乱が生じると思われます。審査の際は、口コミが存在するだけで不可とは判断せず、何に対する口コミなのかを確認してから判断を下す必要があります。

■医薬品のレコメンド広告・訴求は不可

 購入者の購入履歴に基づいて他の医薬品を広告することはできません。ただし、購入履歴に基づかない広告(一律に表示される広告、年齢や性別にあわせた商品を表示する等)は問題ないとされています。おすすめの医薬品が表示されていても、何のデータに基づいているかを考慮して審査する必要があります。

 今回は、実際に広告を確認する際に最低限必要と思われる点を挙げさせていただきました。他にも区分によっては購入個数の制限や、使用者の氏名・年齢を確認する手段の有無の確認などが必要になります。詳細については下記の参考URLにある行政のページをご確認下さい。

 医薬品の乱用や安易な使用は避けるべきであるものの、体調が悪くなった時に近くに薬局がなくても風邪薬や鎮痛剤などが購入しやすくなった事は喜ばしいかぎりです。
ネット販売が解禁されてしばらくしてから明るみに出る問題点などもあるかもしれませんが、いままでグレーだった医薬品のネット販売に対する懸念が法律的にもクリアになったことですし、気を引き締めて審査を行っていきましょう。  

記事作成日:平成26年6月11日

 

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 <参考URL>

■一般用医薬品を対象に6月12日からスタート! 
医薬品のネット販売を安心して利用するために(政府広報オンライン)
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201405/1.html
→広告審査担当だけでなく、一般の人々にも分かりやすい内容

■要指導医薬品一覧 (平成26年6月12日時点)(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/youshido.pdf
→要指導医薬品として行政が公表した一覧

■一般用医薬品のインターネット販売について(厚生労働省) ※平成26年4月時点の資料
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140226-1-3.pdf
→新しい医薬品販売制度についての概要資料

■「薬局、医薬品販売業等監視指導ガイドライン」の一部改正について(厚生労働省)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T140530I0010.pdf
→行政の薬事監視指導のガイドライン

■一般用医薬品販売制度の改正について(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kenkou/iyaku/ippan_kusuri/ippan_todoke.files/H260612Todoke.pdf
→東京都がまとめた新しい医薬品販売制度についての簡潔な資料。冒頭の「新たな医薬品の分類と販売方法について」の一覧が特に分かりやすい

■適正な使用のため販売数量に留意すべき一般用医薬品 (日本OTC医薬品協会)※6月10日時点のリスト
http://www.jsmi.jp/news/topics/pdf/140609.pdf
→販売購入制限が必要な成分を含有している一般用医薬品の具体的な一覧(製品名等)

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