企業や組織、そしてその顧客を狙うフィッシング詐欺の脅威は年々深刻化しています。
そして、このフィッシング詐欺を成功させる上で重要な役割を果たしているのが、本物そっくりに作られた悪質な「フェイクサイト」です。ユーザーは偽のメールやSMSから、気づかぬうちにこの罠サイトへと誘導されてしまいます。

本記事では、フィッシング詐欺とフェイクサイトの関係性、フェイクサイトの具体的な特徴、企業が被る深刻なダメージ、そして被害を未然に防ぐための効果的な対策などについて解説していきます。

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1. フィッシング詐欺とフェイクサイトの関係性

フィッシング詐欺とフェイクサイトは、攻撃を成功させるための「二人三脚」のような関係にあるため、その仕組みと悪用されるフェイクサイトの特徴を理解することが、対策への第一歩となります。

■ フィッシング詐欺の仕組みと目的

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フィッシング詐欺とは、実在する企業(銀行、ECサイト、配送業者、公的機関など)やサービスを装い、メール、SMS、SNSメッセージなどを通じて、ユーザーに偽の情報を信じ込ませる手口です。その主な目的は、受信者を巧みに誘導し最終的にログイン情報(ID・パスワード)、クレジットカード情報、個人情報などを詐取することにあります。攻撃者は盗んだ情報を不正利用して金銭を盗取したり、他のサイバー攻撃に悪用したりします。

■ フィッシング詐欺におけるフェイクサイトの役割

フィッシングメールやSMSに記載されたリンクをクリックすると、ユーザーはフェイクサイトへと誘導されます。このフェイクサイトこそが、フィッシング攻撃における「罠」の本体です。公式サイトのデザインやロゴを完全にコピーし、本物そっくりのログインページや個人情報入力フォーム、決済画面などを用意しています。ユーザーが本物のサイトだと信じ込んで情報を入力すると、その情報が攻撃者の手に渡ってしまうのです。つまり、フェイクサイトはフィッシング詐欺を完遂するための「受け皿」として、極めて重要な役割を担っています。

■ フェイクサイトの特徴

フィッシング詐欺で悪用されるフェイクサイトには、注意すべきいくつかの共通した特徴が見られます。ただし、これらはあくまで判断材料の一部であり、近年その手口は非常に巧妙化している点に留意が必要です。

  • URLの不審点
    正規のドメイン名と誤認させる目的で、スペルミスや不要な単語を加えた類似ドメインが使われていたり、正規サービスとは全く無関係なドメイン名や、過剰に長いサブドメインが含まれていたりする場合があります。また、近年はHTTPS(鍵マーク)で暗号化されているフェイクサイトも多く存在するため、鍵マークがあるからといって安易に信用するのは危険です。正規とは異なる認証局から発行された証明書や、悪用されやすい短期間の無料証明書が使われているケースも報告されています。

  • デザイン・コンテンツの違和感
    サイトのデザインやコンテンツにもフェイクサイトを見分ける手がかりがあります。例えば、古いロゴの使用・不鮮明な画像・ページ間でデザインの統一感がない等が特徴です。また、不自然な日本語の言い回しや翻訳ソフトを使ったようなぎこちない表現、単純な誤字脱字などが散見される場合も注意が必要です。機能面においては、プライバシーポリシーや利用規約といった重要なページへのリンクが切れている、またはクリックしても無反応である等の不備が見られる場合があります。さらに、運営会社の情報や連絡先が極端に少ない、もしくは検索しても実在しない偽情報である場合も、フェイクサイトの可能性が高いと言えます。

  • 不自然な情報要求や挙動
    ユーザーに対する不自然な情報要求やサイトの挙動も重要な判断材料です。例えば「アカウントが危険に晒されています」「今すぐ更新しないとサービスが停止します」といったメッセージで過度に緊急性を煽り、ユーザーの不安を掻き立てて冷静な判断を奪おうとするのは常套手段といえます。そして、そのような心理状況を利用し、正規のプロセスでは考えられないタイミングでパスワードや暗証番号、クレジットカード情報といった機密性の高い情報の入力を執拗に迫る動きが見られます。これらに加え、意図しないポップアップ広告が頻繁に表示される、あるいは不審なソフトウェアやファイルのダウンロードを促されるといった挙動も、危険なサイトの特徴です。

  • 技術的な背景(短命性など)
    これらのサイトの多くが短命であるという技術的な特徴があります。検知システムやブラックリスト登録、テイクダウン措置を回避するため、数時間から数日という極めて短い期間でサイトが閉鎖され、すぐに別のドメインで類似サイトが立ち上げられる「いたちごっこ」の状態にあることが多いのです。この短命性が、発見と対策をより困難にしています。

2. フィッシング詐欺・フェイクサイトによる企業への損害

フィッシング詐欺と、それに悪用されるフェイクサイトは、企業活動に以下のような深刻な悪影響を及ぼす恐れがあります。

  • ブランド価値の低下
    企業名が悪用され顧客が被害を受けると、長年かけて築き上げてきたブランド価値や社会的信用が大きく傷つきます。一度失った信頼を取り戻すことは極めて難しく、顧客離れや将来的な収益機会の損失にも繋がります。

  • 機会損失・売上低下
    顧客が偽サイトへ誘導されることで、正規サイトへのアクセス機会が失われるため、本来得られるはずだった売上を失ってしまいます。また、偽サイトでの不正決済によるチャージバックリスクも発生します。

  • 対応コストの増大
    被害に遭った顧客からの問い合わせ対応、フェイクサイトの調査、社内外への注意喚起、削除 依頼などに多大な人的・時間的コストがかかり、本来の業務を圧迫します。

  • レピュテーションリスク・風評被害
    SNSなどで「あの企業の偽サイトで被害に遭った」といったネガティブな情報が拡散され、深刻な風評被害につながる恐れがあり、新規顧客獲得や採用活動等にも影響します。

  • 法的・コンプライアンスリスク
    被害状況によっては、監督官庁への報告義務や、顧客に対する損害賠償責任など、法的・コン プライアンス上のリスクが発生する可能性も考慮しなければなりません。

3. 企業がフェイクサイト対策で直面する課題

フィッシング対策の重要性は多くの企業で認識されていますが、その入口となるフェイクサイトに対する効果的な対策を内製のみで継続的に実行するのは容易ではありません。

  • 網羅的かつ迅速な検知の困難性(巧妙化、短命性)
    フェイクサイトは日々大量に生成され、URLやデザインも巧妙化しています。加えて数時間から数日で閉鎖・移転するといった短命性のため、限られた社内リソースの中でその全てを継続的に監視し、リアルタイムに近いスピード感で対応し続けることは極めて大きな負担となります。結果として、どうしても発見に遅れが生じたり、見逃しが発生したりするリスクが高まり、その分企業や顧客が被害を受ける時間を与えてしまうことになります。

  • 調査に伴うリスク
    疑わしいURLやサイトを発見した場合でも、その調査自体にリスクが伴います。不審なURLには、クリックしただけでマルウェアに感染するよう悪意のあるプログラムが仕掛けられている可能性があります。そのため、たとえフェイクサイトかどうかを調査・確認したい場合であっても、担当者が不用意にURLをクリックすることは極めて危険です。安全な検証環境や専門知識なしには安易なアクセスは避けたほうが良いでしょう。

  • 継続的な監視と「いたちごっこ」
    苦労して一つのサイトを削除しても、攻撃者はサーバーやドメインを変えて次々と類似のフェイクサイトを立ち上げます。そのため、一度対応して終わりではなく、継続的な監視・対応が必要であり、終わりが見えない「いたちごっこ」に陥りやすいのが現状です。この継続的な負担も、内製での対応を難しくする要因の一つです。

  • 専門リソースの不足
    これら一連の専門的かつ継続的な業務(監視・分析・安全な調査・通報)を効果的に遂行するには、専門知識を持つ人材と十分な時間が必要です。しかし、多くの企業では専任の担当者を配置することが難しく、他の業務との兼務にならざるを得ないため、リソース不足が課題となり、結果的に対策が後手に回ってしまうケースが多く見られます。

4. 迅速な検知・通報と安全な調査体制

ここまでで解説したように、フィッシング被害を最小限に抑えるには、入口となるフェイクサイトを早期に検知し、迅速に通報・対処するプロアクティブな体制が鍵となります。

イー・ガーディアンでは、こうした課題に対応するためのサービス「フェイクサイトテイクダウン」を提供し、専門チームによる早期検知と迅速な通報・削除要請の支援を行っています。

疑わしいサイトの調査においては、独自開発したツールを用いることで、URLに直接アクセスすることなく安全にサイト状況を確認できます。これにより、前述した調査時のマルウェア感染リスクを回避しながら、悪質サイトの特定と迅速な通報を進めることが可能です。この体制により、企業のブランド保護と被害軽減をサポートします。

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5. まとめ

今回はフィッシング詐欺とその入口となるフェイクサイトについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

繰り返しになりますが、フィッシングは無視することのできない経営リスクであり、その被害を最小限に食い止めるためには「早期検知」「迅速な対応(通報・削除要請)」 が極めて重要となります。もし自社での対策運用に難しさを感じられているのであれば、イー・ガーディアンのように専門サービスを持つ外部パートナーと連携して取り組むこともご検討いただければと思います。

こちらの記事が何かのお力になれましたら幸いです。

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