近年、SNSやオンラインゲーム、メタバースなどコミュニティの場がかつてないほどに多様化しています。これらのコミュニティは、新たな出会いや共通の趣味を持つ仲間との繋がりを育み日常生活を充実させてくれる一方で、その手軽さや匿名性から、コミュニティ内でのやり取りをきっかけとした未成年の性被害や、若者をターゲットとした闇バイトへの勧誘といった犯罪被害が後を絶ちません。中でもオンラインゲームは、その娯楽性の高さからコミュニケーションツールとしての側面や危険性が見過ごされがちですが、実際にはゲーム内での出会いが現実の犯罪に繋がるケースが頻発しており、新たな社会問題として注目されています。

本記事では、コミュニティプラットフォーム全般に潜む危険性と、オンラインゲームにおけるコミュニケーションリスク、プラットフォーム運営者が直面する課題、そして全てのユーザーを守るために求められる対策について専門的な視点から解説していきます。

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1. コミュニティプラットフォームに潜む危険性

オンライン上で過ごす時間が増加している現代において、ユーザーが直面するリスクもまた、より巧妙かつ深刻なものへと変化しています。 特に匿名性の高いプラットフォームでは、その特性が悪意を持つ者にとって都合の良い隠れ蓑となり得るのです。

■ グルーミング

グルーミングとは、大人が子供や若者に対し、インターネットなどを通じて巧みに接近し、信頼関係を築き上げた上で心理的に手なずけ、性的搾取やその他の不適切な行為へと誘導する一連の計画的な行動を指します。

特にオンラインゲームにおいては、共通の目的を持った協力プレイを通じて巧みに親密な関係を構築し、ゲーム内アイテムの贈与といった手段で相手の警戒心を徐々に麻痺させ、最終的に個人的な連絡先の交換を要求するといった手口が使われます。加害者は、親身な相談相手や経験豊富な上級プレイヤーといった仮面を被り、時には数ヶ月から数年という長期間をかけて周到に関係性を深化させます。このように時間をかけて築き上げられた信頼関係を悪用するため、被害者は自身が巧妙な罠にかけられているという危険性を認識することが困難になるという、極めて悪質な手口です。

■ なりすまし/誘い出し

同年代や魅力的な異性を装い、言葉巧みに個人情報(氏名、学校名、勤務先、住所、顔写真など)を収集したり、実際に会う約束を取り付けようとしたりする手口です。「友達になろう」「一緒にプレイしたいから会わない?」といった気軽な誘いの裏に、取り返しのつかない危険が潜んでいるケースがあります。これは未成年者だけでなく、孤独感を抱える若者なども陥りやすい罠です。

■ プラットフォーム外への誘導

近年特に警戒が必要なのがこの手口です。サイト運営者の監視の目をかいくぐるため、「ここは監視されているから」「もっと作戦会議をしたいから」「限定情報を教えるから」などと口実を設け、オンラインゲーム内のチャット機能やボイスチャットから、外部のSNS(プライベートな連絡手段)へとユーザーを誘導するケースが頻発しています。 一度、運営側の管理が及ばないクローズドな空間に持ち込まれてしまうと、証拠が隠滅されやすく、脅迫や心理的支配がエスカレートし、被害が潜在化・深刻化するリスクが格段に高まります。

これらの危険に加えて、ネットいじめや誹謗中傷、不適切なコンテンツへの意図しない接触なども、オンライン上でのコミュニティに潜む深刻なリスクです。

未成年者はもちろんのこと、経験の浅い若者も、オンライン上のコミュニケーションに潜む危険性を十分に認識できていない場合があります。特にオンラインゲームのような没入感の高いエンターテイメント空間では、現実との境界が曖昧になりやすく、ゲーム内のキャラクターや人間関係に感情移入しすぎることで、リスクに対する警戒心が低下しやすいという特有の傾向があります。 プラットフォーム運営者としては、これらの危険性が表面化しにくいこと、とりわけ隠語や比喩表現、仲間内だけのスラングなどが用いられるプラットフォーム外への巧妙な誘導は、その兆候を察知することが極めて困難であるという現実を、深く認識しておく必要があります。

2. プラットフォーム運営者が直面する課題

全てのユーザーに安全な利用環境を提供したいという願いは、あらゆるプラットフォーム運営者に共通するものです。しかし、理想的な監視体制を構築・維持していくにはいくつかの課題が存在します。

  • 圧倒的な投稿量に対する迅速かつ適切な対応
    人気のあるプラットフォームともなれば、24時間365日、世界中から途切れることなく膨大な量のテキストメッセージ、画像、動画が投稿されます。これら全ての内容を、内製で人の目で確認し、被害が発生する前あるいは被害が拡大する初期段階で適切に判断・対応することは、不可能に近いです。

  • 巧妙化・潜行化する不正行為
    悪意を持つユーザーは、常に監視の目をかいくぐろうと手口を巧妙に変化させます。一般的な禁止ワードを回避する隠語、文脈によって意味が変わる言葉遊び、絵文字や記号の巧妙な組み合わせなど、その手法はますます巧妙かつ見破りにくいものになっているため、監視手法が目視であれAIであれ、常に対応が後手に回りやすい「いたちごっこ」の構造になってしまいます。

  • 専門人材の確保と維持コスト
    オンラインコミュニティの危険性に関する専門知識、最新のネットスラングやトレンドへの理解、文脈を読み解く高度な判断力、そして強い倫理観と責任感を持つ監視スタッフを確保・育成するには、莫大なコストと多大な労力が必要となります。

  • 監視スタッフのメンタルヘルスケア
    監視業務に従事するスタッフは、日々、攻撃的な言葉、わいせつな画像、時には目を覆いたくなるような有害なコンテンツに晒され続けることになります。その精神的な負担は計り知れず、バーンアウトや二次的な精神被害のリスクも深刻です。彼らの心を守り、安全な労働環境を提供することも、運営上の極めて重要な責務です。

  • AIによる正確な検知・判断の限界
    AIは大量のデータを高速処理できますが、微妙な言葉のニュアンス、文脈、新たな隠語などを完全に理解するには限界があります。AIの検知結果を過信し、人の目による確認や最終判断を怠ると、重大な見逃しや誤検知による不適切な対応を引き起こすリスクがあります。

3. 求められる監視体制とは…?

■ 24時間365日の監視と迅速な対応

まず、コミュニティの安全を確保するためには、24時間365日体制でのモニタリングが必要です。ユーザーは昼夜を問わずサイトを利用するため、監視の目も途切れることなく稼働し続けるのが理想的です。これにより、不適切な投稿や危険なコミュニケーションの兆候を早期に発見し、インシデント発生時の対応の遅れを防ぎます。迅速な初期対応は、被害の拡大を最小限に食い止める上で極めて重要です。

■ AI×人による効率的な監視

次に、膨大かつ巧妙化するオンライン上の脅威に効果的に対抗するためには、AIを活用した効率的な監視体制が求められます。

  • AIによる効率化と一次スクリーニング
    AI技術は、大量の投稿データの中から、明らかに不適切なキーワード、画像、あるいは過去の事例から学習した危険なパターンを高速で自動検知・フィルタリングするのに非常に有効です。これにより、監視業務の大幅な効率化と、人の目だけでは対応しきれない量の情報の初期スクリーニングが可能になります。

  • AIの限界と「人の目」による補完の重要性
    微妙な文脈や言い回し、プラットフォーム外への誘導を示唆する巧みな誘い文句、日々新たに生まれては消えていく隠語やスラングなどは、AIだけでは正確な判断が難しいのが実情です。オンラインゲームのように、独自の専門用語やプレイヤー間の暗黙のルールといった独特のコミュニケーション文化が形成されやすいプラットフォームでは、この傾向はさらに顕著になります。 そのため、専門的な知見を持ち、そのコミュニティの特性を深く理解した「人の目」による詳細なチェックが重要です。

  • このように、AIと人の知見を組み合わせたハイブリッド体制こそが、それぞれの強みを活かし、監視の精度と効率を最大限に高めるための最適なアプローチと言えるでしょう。

    4. イー・ガーディアンの監視サービス

    ■ 豊富な投稿監視実績と環境を保持

    インターネット黎明期の掲示板やBBSが主流だった時代より投稿監視事業で創業し、インターネットの発展と共に事業拡大してきました。長年にわたり培ったノウハウを活かし、より専門的専門的な視点で監視業務を行っております。

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    ■ AIシステムを自社開発

    イー・ガーディアンでは、監視業務の効率化を図るために有効なAIシステムを積極的に自社開発し導入しており、各プラットフォームの特性や監視したいコンテンツに合わせて最適なAIシステム活用を提案しています。

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    5. まとめ

    今回はコミュニティプラットフォームに潜む危険とその対策について紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

    SNSやオンラインゲームをはじめとする現代のコミュニティプラットフォームは、生活に豊かさをもたらす一方で未成年者や若者を標的とした犯罪の温床になりつつあります。全てのユーザーが安心して集い、交流できる健全なコミュニティを維持・発展させていくためには、運営者による継続的な対策が不可欠です。

    イー・ガーディアンは、長年にわたる監視実績とAI技術、そして経験豊富な専門スタッフの知見を組み合わせ、各プラットフォームの特性に合わせた最適なソリューションをご提案しますので、お困りごとやご検討中の課題がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

    こちらの記事が何かのお力になれましたら幸いです。

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