こんにちは。イー・ガーディアン株式会社 ディベロッパーグループのエンジニアです。
今回は、顧客資産を守るための多言語コンテンツ品質チェックツール「Typesetting Checker」を開発・導入した事例をご紹介します。
電子書籍やWebコンテンツなどあらゆるコンテンツの多言語展開が進む現代において、写植(セリフの配置や翻訳テキストの流し込み)のミスは、コンテンツの品質を大きく低下させる要因となります。
この課題を解決するため、当社では、写植作業の前後でミスを効率的にチェックできる専用ツールを開発しました。画像やPDFを並べて表示し、作業ミスを見逃さないための機能を搭載しています。
このツールの主な機能は以下の通りです。
- 原稿比較表示:
画像やPDFを横並びで表示し、視覚的な比較を容易にします。 - 文字サイズ自動検知:
小さすぎて読みにくい文字サイズを自動で検出し、可読性の問題を指摘します。 - 画像差分検出:
写植前後で意図しない変更がないか、画像間の差分を検出します。 - 注釈・指摘機能:
クライアントへのフィードバックや修正指示のために、画像に直接注釈を挿入できます。
本プロジェクトのポイントは、「GitHub Copilotを活用した開発プロセスの効率化」と、開発エンジニアによる「能動的な技術提案(既存技術の活用)」にあります。
1. プロジェクトの背景:セキュリティとスピードの両立
本案件では、顧客事情により以下2つの大きな制約がありました。
- 開発期間は3日程度
業務の開始日が迫っており、即座にツールが必要でした。 - 完全オフライン(PC単体)での動作
発売前のコンテンツという極めて重要な資産を守るため、ネットワークから遮断された環境で動作することが絶対条件でした。
通常、短期間での導入であれば既存のクラウドサービス等の利用が検討されます。しかし、今回扱うのは「発売前のコンテンツ」であり極めて重要な顧客資産です。オンラインツールの利用には、顧客への許諾取得や厳格なセキュリティ審査が必要となり、そのリードタイムは現場の緊急度と乖離していました。そのため、「情報流出リスクを根本から断つ、専用のツール」を自社開発するという判断に至りました。
2. 開発プロセス:AI活用で"3日"というスピード開発を実現
3日間という極めて短い期間で画面操作可能なツールを開発するため、私たちはAIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」をフル活用いたしました。
まず必要な要件・機能をエンジニアが整理し、ベースとなるコードの生成をAIに委ねることで、コーディングにかかる初期工数を大幅に圧縮しました。これにより、 エンジニアは「ゼロからコードを書く時間」を削減した分、AIが生成したコードの検証およびシステム全体の設計や品質に関わる重要なロジックの構築といった「人間が判断すべき領域に注力する」ことができました。
3. エンジニアの提案:現場負担を減らす"画像差分検知"
当初の要件は「画像やPDFの並列表示(左右に並べて見比べる機能)」のみでした。 しかし、開発チーム内で検討した結果、「目視による比較作業だけでは、チェック担当者の負担が大きく、見落としリスクが残る」と考えました。
そこで、開発チームより「画像差分検知機能」の導入を運用部隊へ提案いたしました。
これは弊社が他案件で実績のある画像処理技術を応用したもので、2つの画像をデジタル処理で重ね合わせ、差異がある箇所のみを自動的に検出・強調表示するものです。この機能を実装したことで、「間違い探し」のような目視負荷をなくし、確実な差分チェックが可能となりました。
4. 現場との連携:フィードバックによる機能強化
プロトタイプ版を実際のチェック担当部隊に試用してもらい、そのフィードバックを基に、さらに2つの機能を追加実装しました。
- アノテーション機能
修正が必要な箇所に対し、画面上で枠線やテキストを追記できる機能です。アノテーション後の画像をワンクリックでコピーでき、指示書作成の時間を短縮しました。 - OCRによる文字サイズ判定
光学文字認識(OCR)技術を利用し、文字の位置と大きさを自動判定する機能です。「規定サイズ以下の文字」をシステムが自動検知することで、目視では判断しづらい品質管理(レギュレーションチェック)をサポートしています。
5. まとめ
本プロジェクトでは、AI活用によるコーディングの効率化と、独自の画像処理技術を組み合わせることで、「オフライン環境」という制約を守りつつ、短期間で実用的なツールを開発することができました。
今後も運用部隊からの要望に対し、単に言われたものを作るだけでなく、技術的な観点からの改善提案も含め、迅速に対応していく所存です。
今回の大型プロジェクトでは、制作工程の作業効率を最大化しつつ、品質の向上と安定性を両立させることが必須要件でした。以前に別のローカライズ案件でイー・ガーディアンさんにご対応いただいた際の高品質なチェックと確かな対応力、AI技術を生かしたご提案が大きな安心感となり、今回のご依頼につながりました。
今後もAI技術によるスピード感と安定性をより多くの案件に生かし、社内QAの負担軽減と制作体制の強化につなげていきたいと考えています。
翻訳前後のファイル(PDF/JPG/PNGなど)を比較し、誤字脱字や表示崩れといった僅かな違いを逃さず検知する、AI搭載型の高精度な多言語コンテンツ品質チェックツールです。漫画やコミック、Webサイト、書籍といった様々なコンテンツの品質管理にご活用いただけます。
※生成AI翻訳システム「EG Trans Works」と併用可能。

